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塩野七生「日本人へ 危機からの脱出篇」(2013)読了。


週末に少しずつ読書をしています。




ご存知の方も多いかと思いますが、塩野七生さんは、ローマやベネチアを舞台にした歴史小説で有名な小説家です。

日本に戻ってきたとき、海外在住者の視点で日本の政治や社会について発言している人を探したら
本屋さんでちょうど「日本人へ」が出ていたので、すぐに買いました。
ところが、そのまま忘れて書棚へおいていました。




最近、ある意味での「断捨離」として、積んである本を少しずつ読むことにしました。
それで、まずは2013年出版の「日本人へ  危機からの脱出篇」を読みました。
民主党政権から自民党政権に戻った頃です。




フルタイムで大きな仕事をしながらも読書したり色々考えたりできる人たちって、凄いですね。
私には出来ませんでした。
なぜ出来なかったのか・・・反省しながら読みました。






この「日本人へ」は数冊出ているようなので、機会を見つけて少しずつ読みたいと思います。







*** 以下、面白いと思ったフレーズの引用です。***




(扉ページ)

「やらないで後悔するよりも、やって後悔するほうがずっとよい。」
ニコロ・マキアヴェッリ

 野党時代でも政治的カンは磨けるのではないかと言われるかもしれないが、答えは九〇パーセント否。政策を批判することと、政策を実行することは、天と地ほどもちがう。出版の世界でも、優れた編集者が優れた著者になれる率はかぎりなく低いし、行かず後家でずっと来た女が良き妻に変身する率も低い。
 「素質」には先天的なものが多いかもしれないが、「カン」だけは絶対に後天的なものである。ゆえにカンを磨くには、現場で積む経験しかない。現場経験にいかに多く恵まれるかでカンは磨かれ、それを使う必要に迫られたときに存分に駆使できるのだ。


p123

「疑心暗鬼に駆られたあげくに立ち止まってしまい、後から来る人たちに押しつぶされて死ぬか。それとも、危険を避けながらも走り抜ける力は自分にだってあると信じて走り出すことで生きるか。放射能もガンの原因になるかもしれないけれど、ストレスなんてもっとガンの原因になるのよ」

p187

何よりも重要なことは、日本人の一人一人が、世界中にカントリー・リスクがゼロな国なんてどこにもない、と冷徹に認識すること。カントリー・リスクは国によってちがう。地震や津波がリスクの国。インフラの整備が不十分なために洪水などの天災に弱い国。すぐに宗教を旗印にして暴力化する国。労賃は安くても治安の悪い国。天災の災害は少なく治安もよいのだが、傭う労働者にかかる全費用がやたらと高い国、等々。


p200

第一に衆愚政とは、有権者(アテネの場合はアテネ市民権所有者)の一人一人が以前よりは愚かになったがゆえに生じた現象ではなく、かえって有権者の一人一人が以前よりは声を高くあげ始めた結果ではなかったか、ということ。それに加えて、これら多種多様になること必定の民意を整理し、このうちのどれが最優先事項かを見きわめ、何ゆえにこれが最優先かを有権者たちに説得した後に実行するという、冷徹で勇気ある指導者を欠いていたのではないか、と。

p234

ヨーロッパ人は少なくとも、過去の戦争は自分たちにも責任があった、とは思っている。だがアジア人は戦争を、旧帝国主義のせいだったと信じて疑わない。自分の過去に対して疑いをもたない人間は、不都合なことがあると、それを他人のせいにする。他者に責任を転嫁する生き方しか知らないできた人に、新らしい一歩は絶対に踏み出せない。アジア連合が出来たとしてもその目的は、二度とアジアでは戦争を起さない、ということにはならないだろう。アジアでの連帯は、経済上のことに留めておいたほうが無難だと思っている。

 

(引用おわり)





 

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